江戸東京たてもの園にて・メイキング

今回は絵栖:room09のメイキング&解説です。
まず
こちらのギャラリーを先に見てから、このページをご覧ください。

小金井公園内にある「江戸東京たてもの園」。
はじめは昭和期のレトロな建物の素材が欲しくて撮影に行ってみたのですが、
これがなかなかに面白いところ。
建築物の外面だけでなく、屋内の調度品も当時のありようを再現されており、
帰宅後に画像整理をしながら、「ここでスーパードルフィーの撮影したいなぁ」と思ったのでした。
しかし、それが出来ないいくつかの問題があったのです。


・人多すぎ
人目を気にせず往来で人形の撮影をするかたも結構いますが、わたしはアレが出来ません。
まず、恥ずかしいから。
それに、往来で人形の撮影をする行為に好意的な反応を示してくれる通行人も中にはいるそうですが、
そうでないほとんどの人はやはり私に対して何がしかの不安感を持つのではないか、と思うからです。
違法行為でないにせよ、社会的認知を受けていない行為、理解されにくい行動は謹んでおきたいな、
特に”人形”に関してのことについては、と思うのです。
人それぞれの考えがあるでしょうから、他人もそうすべき、とは思いませんが。


・貴重な調度品だし
屋内に展示してある家具や調度品は、当時のものを修復した本物ばかり。
「手を触れないでください」という注意書きがある物もない物も、
上に人形を置いて傷をつけたりしたら大変です。

・全部合成画像でやったら面白そう
なぜかたまに、軽い気持ちで修羅の道へ進んでしまうというか、
そういう面倒なことをあえてやりたがる嗜好が私にはあって、このときもそれが発動しました。
現場での撮影はムリそう、という判断もあいまって、今回これに挑戦してみたわけです。
副産物として、撮影時に気持ちに余裕がある分細かいことまで気が回るので、
御髪の乱れ、服のシワ、球体関節があらぬほうに曲がってて怖いことになってる、
といった屋外撮影でありがちなトラブルが避けられるということもありました。


sds0901.jpg


赤い丸の中にはべつに怖いものが写っているわけではなく、余計なものを削除したしるしです。
この場合プレハブ(左)とベンチで寝てるおっさん(右)をデリート。
この背景にあわせてライティングして撮影したのが右画像です。11枚ほど撮影した中からセレクト。


sds0902.jpg



背景は初めからわざとピンぼけ写真で撮影したものです。絵栖の影には立派な門柱が隠れているのでした。
門柱を見るとわかるとおり、実は絵栖と背景のパースは全然あってません。
でも門柱を隠してしまうことで、それをうやむやにしてしまってます。(笑)
絵栖が手に持っているのは「王立博物館」のガラスの地球儀。
この地球儀に、背景の木の枝を逆さにしたものを合成しました。(レンズの効果で向こうの景色が逆さに映るのです)

sds0903.jpg



昔の写真館を移築・再現した建物内です。
リアルスケールだと小さすぎるので、絵栖の大きさを1.5倍くらいにして合成。
なんか落ち着かない画像になってしまった気がします。ライティングもなんか難しくて、
14枚撮ったものから選んで一旦合成したものの気に入らず、後日さらに10枚撮影して改めて合成したのが
このsds0903.jpgです。
ちなみにこれは右画像を普通にオートで撮影したもの。
この薄暗い状態で、シャッタースピードを落として撮影することで、
あのようにふわっと明るく写しています。

sds0904.jpg



古い半鐘の塔のてっぺんを、地面近くに移築したもの。
そのため、

このようになにやらムーミン谷の建物のような、
メルヘンチックな姿になってます。
てか、なんでこんなにデザインが凝ってるんでしょうねぇ。
合理性をよしとする今とは違う価値観で作られたっぽいです。
手すりに合わせるために、絵栖の手の位置を変えて6枚ほど撮影、
その中からセレクトしました。
背景に比べてちょっとハイキーなんですが、
レフ版で光を当てたみたいになったのでこれで良しとしてみました。

sds0905.jpg



色が合わなくて、背景の色まで変えてみたりして難儀した合成画像です。
というか結局まだ合ってないですよね…
ボツろうかどうしよう悩んだ末、とりあえず入れてみました。


sds0906.jpg



こういう台だとパースが合わせやすいです。まんまの角度で撮影台(ダンボール箱)をセットして撮影。
このあとは屋内で撮影した背景に合成したものばかりですが、屋内は光の入ってくる方向が限られているので、
同じように屋内で撮影した素材を合わせやすいです。
絵栖の後ろの白や黒の板も、適当に置かれているわけではありませんですよ。


sds0907.jpg



窓辺に置かれた机とその上のランプを撮影した背景です。
机表面の映りこみは、絵栖を鏡の上にたたせて撮影することで再現しました。
ただこのままだとくっきり映りすぎなので、ぼかしたり伸ばしたりしてから合成しています。


sds0908.jpg



これはわざとじゃなくて勝手にピンぼけになった写真を利用したもの。
結構使えることがあるので、あきらかなミスショットも削除しないで取っておきます。
この部屋はなんだか人形というものに合う雰囲気の部屋で、
このあとのsds0909.jpgとsds0912.jpgもおじな時部屋を背景に使ってます。
実のところ、絵栖は1枚目のsds0901.jpgと同じポーズです。


sds0909.jpg



ピアノわきの窓です。絵栖はこのように、間接光で撮影しています。
完全に逆光になってもおかしいので、光のあたり具合を調節しながら何枚か撮影して合成。
棚への映りこみは、その部分が小さいこともあって適当にそれっぽく手書きしました。


sds0910.jpg



これも直接光ではなく、トレペで散光させたライティングで撮影しました。
台に座らせるのはもうやったので、どうしようかと思ったすえ、寝せてみました。
合成どうこうよりも絵栖の手や足の表情が気に入ってる作品です。


sds0911.jpg




左が奥の背景、右がガラスに映ったっぽい背景です。
実際に、ガラス越しの被写体を正面から撮影すれば、必ず撮影者がガラスに映るわけですが、合成ならこういうのも可能。
最初は右の画像を背景にしようと考えていたんですが、途中で気が変わってこのような変則的なものになりました。

sds0912.jpg



ピアノの上の注意書きはデリート。
絵栖は、背景の状態に合わせてセッティングして撮影したので、なんだかややこしいことになってます。
照明はハレーションを起こして真っ白ですが、これはけして強い照明を使っているのではなく、
デスクライト程度のライトを白い板に反射させて、それを10秒くらいのスローシャッターで撮影したものです。


sds0914.jpg


背景左隅のカプールをデリート。
窓際は光の入射角が意外とハッキリしないので、適当に逆光気味にライティングしたものを
手前に合成すればなにげに合うので、好きな背景です。(ひでぇ理由)
いや、屋外の風景を額縁にいれたようで絵的にもいい感じなのですけどね。
ところで、人形をお持ちでない方は奇異に思うかもしれませんが、人形にはかなりはっきりと表情があります。
それは結局、見る角度と顔の陰影による物なのでしょうが、
一度撮影したことのある表情が、同じライティングでももう二度と撮れない事も珍しくなく、
このへん、人形撮影の奥深いところであります。右の絵栖もその1枚。
髪の毛を整えるためにちょっと顔を動かしたら、もうそのあと何枚撮ってもこの表情は出ませんでした。


sds0915.jpg



あえてドールスタンドごと合成した1枚。
レトロなデザインの電話機がステキです。
「壁際」は影をきっちり再現することで説得力が増して背景になじみやすいので、やりやすい背景です。
そればっかりというわけにもいきませんけど。


sds0916.jpg


これまたレトロな卓上テレビ。SONY製です。これ当時ものすごく高級品だったんじゃないかなぁ。
背景右のライトスタンドのポールをデリート。これがあると、この影を絵栖に入れなくてはいけなくなるので
すげー邪魔者なのです。(…あ、机に映ってるポールを消し忘れてますね)

絵栖の載っている台についてですが、全反射な鏡を使うと絵栖に下からの強い光があたりそうだったので、
黒い板の上に透明の塩ビ板を置いて、半反射な机を再現してみました。
鏡は一度も試してみなかったので、もしかしたらそっちでもうまくいってたかもしれないけど〜。


…ということで、以上です。

いつもやっている怪獣を街に合成したりするデジラマは、アレはそもそもありえない光景なので、
多少嘘っぽくてもかまわないと思うのですが、今回は”絵栖がそこにあるように”合成したかったので、
背景とのマッチングが非常に難しかったです。
撮影したあととりあえず背景にあわせてみて、合いそうならマスク切りに入り、
合わなそうなら撮影のやり直し、またマスクを切って色補正してみたらやっぱりダメぽくて撮影のやり直し、
それを繰り返した末、結局うまく合わせられずに封印したボツ画像も何枚かあったりします。

今回は、背景を撮影したその場所の絵栖を置いて撮影した画像が「正解」とするなら、
その正解と同じになるようにライティングし撮影し補正する、そんなパズルをやっているような感じでした。

面白かったけど……
もーね、こういうのしばらくいいや。
次回はニアピンくらいの正解で勘弁してください。(ぉ


2005年2月27日 20:34:00
TOPへ戻る
INDEXに戻る